hishaismの打ち込み日記

ド素人がピアノを打ち込んで、「わ~できた~!」とはしゃいでいる日記

F. Chopin - Grand Polonaise Brillante in E-flat major, Op. 22.

 ショパンの華麗なる大ポロネーズを打ち込みました。本来は「アンダンテ・スピアナート」という穏やかな序奏と合わせて「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」というひとつの作品なのですが、ここではポロネーズ部分だけをお届けします。アンダンテ・スピアナートはこちらスタインウェイ用も作り直したいと思っていますが、いつ実現することやら。

(音の間違いなどお気づきになったら、教えて頂けると嬉しいです)

曲について

 おそらくコンサート向けに書かれた作品で、ショパンの作品のなかでもひときわ華やかな作品です。管弦楽による助奏が付いているものの、ピアノで代替可能なので独奏されることも多い作品です。正直に言ってしまえばオーケストラの出番がこれだけ少ないというのは、ショパンがオケを気にせず自由に演奏したかったからなのではないかな、と勝手に思います。

 そしてポロネーズはなんといっても舞曲。とくにこの作品は、右手が軽やかに踊りつつカンタービレで存分に歌うなど、ショパンらしい魅力の詰まった作品だと思います。表現的には、長大な装飾音をはじめルバートが不可欠なことは明らかなのですが、ルバートを使いすぎると踊りがてんてこ舞いになってしまうという点で、バランスが難しい作品でもあると思います。

 以下、大ざっぱですが個人的に好きなポイントをいくつか取り上げて書いてみます。いわば手前味噌のネタバラシ的な話なので読まない方が曲を楽しんで頂けるかと思います。

個人的に好きなポイント

アクセント

 飛び跳ねるようなアクセントはこの曲の魅力の一つだと思います。いわば右手が踊るように鍵盤を縦横無尽に飛び回ってゆきます。しかもカンタービレも求められるわけですから、歌って踊れるピアニストという感じですよね(謎) アクセントでこだわった部分の一例を挙げると、冒頭のこの部分です(譜例1)。

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譜例1、譜例2

 譜例1、運指で言う4の音は羽が触れるように軽くタッチして、3でしっかり着地することで重みをつけます。こうしてアクセントをつけるとガラスの靴を履いて踊っているようなイメージが浮かんで好きです。ただ、実演奏を聴くとこういう表現はあまり聞かないのでどちらかというと異端的な解釈かもしれません。正しいかはさておき、こういう弾き方があっても面白いのになと思います。そのほか、裏拍のアクセントをしっかり強調したり、抜く音と入れる音をしっかり意識するなど、ポロネーズのリズム感を出してゆきます(譜例2)。

装飾音

 主部の旋律は繰り返しではフィオリトゥーラとも呼ばれる長大な装飾音をともなって変奏されます(譜例3)。実際に聴きに行くと、わたしはこの部分でいつも「おおおーっ」と目を輝かせながらピアニストを見てしまいますね。

 ただし、こうした長大な装飾音は打ち込みの敵です。そのままだとベタ打ちになってしまうし、テンポをいじりすぎると左手のリズムが破綻して音楽が宇宙をさまようことになります。今回のわたしのやり方は、まず右手を先に入力して64分音符単位(正確には32分音符の2倍速)でテンポを変えながら細かい表現をつくります。そこから、そのテンポのなかでも左手がきちんとリズムを刻むように、位置を変えて入力する方法をとりました。

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譜例3

譜面から変更した部分

 好きと言うか興味深いポイントが、主部のあとのこの箇所です(譜例4)。同じ音型でたぶん和声的にはf-gと変化するところなのですが、上段では両手ともオクターブ跳ね上がっているのですが、下段ではそうはなっていません。これは音域的な制約上の処理(ショパンが使っていたであろうプレイエルの最高音はF7、該当箇所はG7が必要)だと考え、上段と同じようにオクターブ上げました。

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譜例4

全体的に

 全体的には、最初はある意味でショパン的に、夜想曲的にデリケートに……。終盤は大胆に技巧を前面に出しています。そして繰り返しの表現を工夫してみました。繰り返しを同じように表現するのは個人的には「もったいない!」と思っているので、歌わせ方もまったく変えています。全体的には提示部は可憐にデリケートに、再現部からコーダ、フィナーレにかけては大胆に(最初はお上品に振る舞ってたのに急に気合の入ってしまった人みたいな……。)。部分的には同じフレーズの繰り返しでアクセントを変えたり、強弱のメリハリを大きくしたりしています。

 あと以外にこだわったのが冒頭のこの部分(譜例5)。16分音符×2と3連符×2の部分をいわば8連符とみなして、右手だけがaccel.する感じです。16分音符と連符を明確にしてしまうと機械的になってしまいます。

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譜例5

 そのほか、冒頭の弦楽器のピッツィカートをどう再現するかという大問題(ウナコルダでstaccatiss.にしてみました)とか、消え入るようなppのカンタービレとか、これはホルンの音だよーとか、同じ音型の繰り返しにどう変化をつけているかとか、ここの表現は自分的にお気に入りですーとか、好きなポイントはまだまだあるので書きたいのですがすでに3000字近くになってしまったのでこのあたりでやめておきます。